認知の歪みに取り組む

認知療法とは、アーロン・ベックという方が考案した心理療法の一つで、人の物の受取方(認知)の歪みを再構成する為の技法です。
このベックという方は、当時うつ病が感情の病気とされていたのに異を唱えました。
ベックは、うつ病を抱えている方には、独特の認知の歪みのパターンが見られるとし、その歪みを修正することで改善が出来ると考えて、その認知の歪みを修正する為にできたのが認知療法です。

認知の歪みには10種類があるとされ、ご相談においてこの10種類の認知の歪みに対して妥当性を検証したりすることで、適応的な思考へと修正していく作業をしていきます。

では、具体的にどのような認知の歪みがあるのか見ていきましょう。

10種類の認知の歪み

1. 全か無か思考
物事を0か100かの極端に捉えて中間が考えられない為、 “完璧主義” に陥りがちな思考です。

(例)
「結局は、仕事は一つでもミスをしたら、他がうまくいっていても終わりである。」
「少しでも厳しい所がある人は優しいとは言えない。」

2. 一般化のしすぎ
私たちが体験する出来事に対して、過度な一般化をしてしまう場合がこれに当てはまります。
一度や二度程度しか経験してないのに、それが全ての出来事に当てはまるかのように思いこむ思考パターンです。

(例)
「ほら、いつも失敗するんだ。(2回目の失敗にも関わらず。)」
「絶対にうまくいかないよ、だって以前にうまくいかなかったから。(前回の1回を取りあげて)」

3. 心のフィルター 
物事には、いい側面があるにも関わらず、その側面にフィルターをかけてしまい、悪い側面ばかりに目が行くこと。

(例)
「人生って、辛いことばっかりだ。」
「今まで生きていて、楽しかったことなんて一つもない!」

4. マイナス化思考 
一般的にいって良いと思われるようなことまで、ついついネガティブに捉えてしまいがちなこと。
(例)
「今日は、家事手伝うよ。」とご主人に言われて、何か魂胆があるんじゃないかと考える。
「あの時は、ごめんね。」と謝られても、何か裏があるはずだと考える。

5. 結論の飛躍
一般的に、私たちは出来事に対して、論理的に考えたり、自分の実体験や経験に基づいて物事を判断したり、順を追って判断しますが、それを全て飛ばして結論を出してしまうことです。

(1)心の読みすぎ
私たちは、相手の心はわかりませんが、表情や言動・しぐさなどから推測をすることが多くあります。
それ自体は問題ありませんが、それが度を越し、ネガティブな方面へ結論を飛躍させてしまうことです。
(例)
「今朝会社に行って、Aさんに挨拶されなかった。きっとAさんは私のことが嫌いなんだ。」
「さっき、目が合った人は笑っていた。きっと自分ことを見下していたんだ。」

(2)先読みの誤り
私たちは、自分の将来について思いを馳せます。きっとこうなるだろうとか、こうなったらいいなといったようにです。
しかし、この先読みの誤りでは、自分や物事の未来に対して、十分な根拠がないのにも関わらず、ネガティブな結果(未来)を予測し、紐づけます。
(例)
「今日仕事で、ミスをした。自分は、一生このままこの仕事では上手くいかないんだ…。」
「メールの返信が、もう2時間もこない。このまま私は好きな人ずっとほっとかれるんだ。それなら自分から…。」

6.拡大解釈(破滅化)と過小評価
自分の失敗や悪いところ等の良くないところを拡大解釈するが、自分の成功や、良いところを過小評価する。
人に優しく、自分に厳しい人が典型的な例です。

(例)
「今回のミスは、私が無能だからだ。」
「今回の仕事の成功に関して、自分は何一つ貢献することをしていない。」

7. 感情的決めつけ
感情的になり、自分の感情が事実を証明する証拠のように考えること。
(例)
「こんなに不安を感じるんだから、成功するはずがない。」
「これだけイライラさせるんだから、あの人は私のことが嫌いなんだ。」

8.すべき思考
「~すべき」「~しなくてはいけない」といったように過度に考えること。
(例)
「大人なんだから、もっとマナーを身につけるべきだ。」
「人には優しくしなければならない。」

9.レッテル貼り
自分や他人に対して、極端なイメージを創り、そのイメージで自他を判断するようになること。
(例)
「自分は、生きる価値がない人間だ。」
「あの人は、仕事ができない人間だ。」

10.個人化
物事の責任・原因が自分にすべてあると必要以上に考える(原因・責任が自分と関係ない場合でも)思考パターンです。
(例)
「あの人の仕事がうまくいかなかったのは、全部私の責任だ。」

このように認知の歪みには10種類があるとされ、この歪みが私たちの物事の受取方へ大きく影響を与え、不自由さを生んでいることがあります。
ご相談では、このような極端な認知に対して、それを修正し少しでも生きやすくなるような取り組みも行っています。

自分をいたわる

心の声を聞く

感情のケア