「よく…、一人で耐えてきましたね…。」cry

目の前で泣き出したその方に、僕はそっと声を掛けました。

「ひっくひっく」と、その方は僕の目の前で、

声を出しながら、目から大粒の涙を流してポロポロと泣き出しました。

 

そう、その方は大変な経験をしてきました。

 

そんな体験をしてきたからこそ、

その瞳から流れる大粒の涙は、他でもない自分の為の涙なんじゃないかと、

そんなことをふと思った僕は、その人に対してこんな言葉を掛けました。

 

「今、あなたは泣いていて、頬を伝う涙を感じますか?」

すると、相手は「はい…。」と答え、

「その頬を伝う涙は、あったかいですか?」と聞きました。

すると、その人は、「あったかいです…。」と、そう答えてくれました。

 

そして、僕は、その方に

「そうですよね、あったかいですよね。その頬を伝うあったかい涙を感じて下さい。」

「そのあったかい涙は、もしかしたらあなたの為に流れているのかもしれません。」

と、そう声を掛けて、最後にこんな言葉を掛けました。

 

「そのあったかい涙に口があったら、なんてあなたに言うと思いますか?」

そう、僕はその方に声を掛けると、その方は、

「ありがとう…って、言っている気がします…。」

そういって、さらに大粒の涙を流されました…。

 

悲しみは、必ずしもすぐには癒えないかもしれないです。

でも、その流れる涙を止めなければ、

少しずつでも、その悲しみは流れていって、

いずれ癒えていくと、そんなことを思うのですよ。

 

あなたは、

けっして悲しみたくて悲しんでるわけじゃないじゃないく、

けっして苦しみたくて苦しんでるわけじゃないじゃないですか。

そして、泣きたくて泣いているわけでもなくて、

その悲しみや、苦しみを何とかしたくて泣いているんですよね。

 

だから、そこから出てくる涙は、

きっとあったかくて、あの方のような、

あなた自身の為の涙だと思うのです。

 

だから、泣きたい時は泣いてください。

その涙は、あの方のように、誰の為でもない自分の為の涙なんですからね。

人は、乗り越えたくて涙を流すんですから。

野川  仁
・元引きこもりの心理カウンセラー
・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・(一社)日本心理カウンセリング協会 代表理事
現在は、都内のクリニックでカウンセリングも行っている。

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