「もともと時間がかかる旅ですから、ゆっくり行きましょう。」

そう告げると、目の前の人はコクリと一度頷いた。

時間が掛かる。

僕たちが変わるのには、

時間が必要だ。

苦しんできた時間が長いだけ、

癒すのにも時間が掛かる。

それなりに時間が必要なのだ。

この言葉を告げた方は、

小さい頃に虐待を受けて、

出来の良い兄弟と比べられ、

好きなことも一切できずに生きてきた。

その生活が今に影を落とし、

躁鬱の狭間を今も懸命に生きている。

時間が掛かるのだ。

というより、

時間が必要なのだ。

少しずつ、

少しずつ、

本当に少しずつ、

立ち止まったり、

後戻りしたり、

ちょっと進んだりを繰り返して、

僕らは少しずつ成長していく。

それでいいし、

それがいいんだ。

幼い頃の苦しかった自分の記憶が

今でも自分を襲ってくる中で、

どう希望を見い出せる?

どう未来を描ける?

いきなりは変わらない。

変えられない。

でも、今からなら出来ることがきっとある。

だからこれまで歩んできた凸凹の道と、

結果的に1cmでも進み始めた今を振り返りながら、

僕は、それをあなたに知って欲しくて、

僕は、そう言葉を掛けたのだ。

野川  仁
・元引きこもりの心理カウンセラー
・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・(一社)日本心理カウンセリング協会 代表理事
現在は、都内のクリニックでカウンセリングも行っている。

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