『悲しみは感じ、ねぎらうことで解消する。』

悲しみを抱えた人を目の前にすると、

僕たちはどうしていいのかわからなくなったり、

「そんなに悲しんでないで。」

と言葉を掛けたりして前を向いて欲しくなる

なんてこともあります。

そして、自分自身が悲しみを抱えたときは、

「人に涙を見せてはいけない。」と僕たちは学んできていますので、

「我慢」という選択肢を取ることがほとんどです。

ただこの「我慢」は、うまくいかないケースが多くあります。

それは一時的には我慢が出来ても、

悲しみは流さないと溜まっていってしまうからです。

溜まっていくと、抑うつ的になったり、

ふとした瞬間に涙がこぼれてくるようになったり、

何回も同じ気持ちや記憶がやってきたり、

目の前の出来事を受け止めきれなかったりと、

様々なことが起きてきます。

そして一番大切なところですが、

悲しみには逃げていると余計にこじれてしまうのです。

それは悲しみは我慢するものではなく、感じ、味わうことで

解消していくもであり、感じ、味わうことで

悲しみの奥にあったあったかい気持ちに気づいていくものだからです。

その為、カウンセリングにおいても援助する方向性は、

目の前の人がその悲しみをしっかり味わえるように、

感じられるように援助し、願わくばその悲しみの底にある

温かさに気づけるように援助をしていきます。

とある女性のケースです。

その方は仕事を一生懸命に頑張ってきました。

でもうつ病のような症状が出てしまい、

朝起きられなくなり、会社に行けなくなってしまいました。

仕事上のストレスや転機、家族関係での問題などが重なり、

以前のようにうまく歩けなくなってしまったのです。

それまで一生懸命にやってきた仕事。

ようやく手にできそうだったキャリアがその手からこぼれていってしまいました。

きっと、とっても悔しかったでしょうし、

悲しかったと思うのです。

話をするときも、「なんでこんなになってしまったんだろう…。」

と目に涙を浮かべてお話をしていらっしゃいました。

でも、こんなことではないけない!と力を振り絞って、

前を向こうと涙を拭って顔を上げようと、

また歩もうとされていました。

悲しいものは悲しい。

それでいいのですが、僕たちは無理やりに前を向こうとして

悲しみに蓋をしてしまうのです。

先に書いたように悲しみは感じることで解消していきます。

そこでこんな援助をしていきました。

「なんでこんなになってしまったんでしょうね…。」

「きっと一生懸命に頑張ってこられましたね。」

「きっと悔しかったでしょうし、それまで大切にしていたものが崩れてしまった感覚ですよね…。」

と共感をしつつ声をかけていきました。

するとその方は、こう答えてくれました。

「そうですね。私、これでも一生懸命にやってきたんですよ。」

「でも、もう頑張れないんです。頑張ろうとしても、以前のように頑張れないんです…。」

「自分でもよくわからないんです。なんでこんなになっちゃったんだろう…。苦しいんです…。」

と、そういいながら胸に手をあてて涙を流されていきました。

そこで僕は次のように声を掛けていきました。

「その胸の感覚を強めてください。ちょっと辛いかもしれませんが一緒にいますので大丈夫です。」

「その感覚を十分に感じてください。」

「ずっと苦しかったですね…。」

「一人で頑張ってこられましたね…。」

一生懸命に生きてきた目の前の方に、このように声を掛けつつ

その悲しみを感じてもらいました。

そしてこう援助をしていきました。

「その感覚にこう声をかけてください。」

「一生懸命に生きてきてくれてありがとう。」

「こんなになるまで頑張ってくれてありがとう。」

と、そのように伝えると彼女は声を震わせながら、

大粒の涙を流しながら自分に伝えてくれました。

悲しみを解消していくには、

感じていくこと。

味わうこと。

そして、悲しみを抱えた自分をいたわること。

それがとても大切です。

そういったことを通して心に溜まった悲しみは流れていくのです。

野川  仁
・元引きこもりの心理カウンセラー
・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・(一社)日本心理カウンセリング協会 代表理事
現在は、都内のクリニックでカウンセリングも行っている。

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