期待に応えるのをやめ、一人でいる時間が必要だ。

苦しくて、苦しくって、

一人泣きじゃくってても、

一人でいる”必要”がある時がある。

 

一人でいたいんじゃなくて、

一人でいる”必要”がある時があるのだ。

 

そっと、

何もせず、

私といる。

苦しかった私の隣に。

 

私がいてあげる必要がある時がある。

 

「そっとしておいてほしい。」

「一人にして欲しい…。」

そう目の前のあなたは言う。

 

沢山の恩義を感じ、

頑張ってきたけど、

誰かの死と向かい合い、

重すぎる仕事の責任に、

激化する仕事の量に到底耐えることなどできず、

鬱になってしまった。

 

だれがあなたを責められようか。

 

でも、鬱になった自分を許せずいて、

ただ、なんとも出来なくって、

苦しくって、

気遣ってくれることすら痛くて…。

そんな言葉が口から出てきたのだ。

 

恩を誰かに返せなくてもいいんだ。

それだけ苦しんでいるんだ。

苦しんだんだ。

 

そして何よりも、

それは”今は”返さなくていいんだ。

 

誰かがあなたを心配している。

「大丈夫?仕事辞めた方がいいんじゃない?」

「そんなに泣くまで続ける必要があるの?」

その言葉が胸を突き刺さる。

 

自分でもわかっている。

限界なのは分かっている。

でも、ちょっと待って欲しい。

一人にして欲しい。

自分で考える時間が欲しい。

 

「大丈夫?」って言われると、

余計に苦しいんだ。

 

胸が苦しいんだ!

 

分かってよ!

 

でも、それも通じない。

だって、あなたを心配してくれる人のその心も痛く、

苦しいんだから。

 

そう、あなたと同様に相手も苦しんでいる。

でも、その苦しみはあなたと違う。

 

無力感を感じるのだ。

力になれない自分に。

いたたまれないあなたをほっておけない自分の苦しみを見ているのだ。

 

だから、あなたはあなたで”今は”堂々と自分を見よう。

自分の心を見つめよう。

 

周りが言う。

「やめた方がいいんじゃないか。」

「大丈夫?」

そんな思いに応えなくて”今”はいい。

 

あなたは、あなたの叫びを聞いたんだ。

「ほっといて欲しい。一人にして欲しい…。」

その心の叫びを聞いたんだ。

 

あなたが”今”いるべきは、

他の誰でもないあなただ。

 

そうだでしょう?

 

だからその声を聞いて、

その声に従ってあなたは立ち止まったんだ。

 

どうしたらいいか分からない。

そう頭で感じても、

あなたは心で止まったんだ。

 

だからもう一回

勇気をもって立ち止まるんだ。

自分の心を迎えに行くんだ。

 

さぁ。

 

そして僕はあなたに声を掛けた。

「隣にこれまで生きてきた自分が座っているとイメージしてください。」と。

 

すると座った瞬間あなたの顔が歪み、

涙がこぼれ落ちた。

 

どれほどの辛さを抱えて来たのか…。

そう、心の中で労りながら、

あなたに続けざまに声を掛ける。

 

「そうです。隣の自分を感じてください。どんなに頑張って生きてきたか。」

「どんなに苦しんで生きて来たか。」

「何もしなくていいですから、ただその自分と一緒に居てあげてください。」

「いろんな人からいろんなことを言われて、

自分が分からなくなる程苦しんでしまった自分といてあげてください。」

あなたの目から大粒の涙が流れる。

 

「そうです。苦しかったですよね。」

「ただ、一緒に居てあげてください。」

「ずっと一人で寂しかったはずです。一緒に居てあげてください。」

 

ひとしきり一緒に居てもらい、

少し穏やかな表情になったあなたに僕はこう告げた。

「目を閉じながら、右に座っている自分の椅子に手をそっと伸ばして、

そっと触れてあげてください。」

そっと椅子に触れると、

あなたはまた、静かに涙を流し始めた。

 

「そうですよね。触れると理由は分からないけど、

苦しみがその手から伝わってきて、

さっきよりも苦しみを感じますよね。」

「でも、今あなたは、頑張ってきた自分の苦しみを半分背負ってあげています。」

「ずっと重かった気持ちを今、あなたと二人で。」

 

「そして、その荷物を背負ってしまったのは、

背負った思いの奥の奥には、苦しみだけでなく、

昔の自分の思いがあることに気づいていますよね?」

「あなたがそれを背負ったのは、小さい頃に決めたあの決意を、

小さい頃に乗り越えたあの出来事や思いが支えになり、

あなたを突き動かしたことにあなたは気づいていますね。」

 

小さく頷く。

そして、あなたの目からまた涙が流れる。

 

そして僕は言う。

「そうです。」

「あなたの苦しみの奥には、

苦しみだけではなく、

大切な思いがあります。

その思いを力に、

支えにあなたは頑張って生きてきました。」

 

「その思いとも一緒に居てあげてください。」

 

「苦しみだけではなく、辛さだけではなく。」

「あなたの大切な思いと一緒に。」

 

静かに時間が流れ、

穏やかな表情になるあなた。

 

それを見て、その場の雰囲気から、

何やら力強さを感じた僕は、

あなたにこういったんだ。

 

「今、隣の自分に触れて、

先程のような苦しみではなく、

頼もしさも感じていますね。」

 

静かに頷くあなた。

そして僕は、こういったのだ。

 

「沢山乗り越えて来たんです。」

「小さい頃、あなたは先程私に言っていましたね。○○にコンプレックスを感じたと。」

「そこで僕は言いましたね。あなたがこの部屋に入ってきた時、

その痕跡を感じなかったと。」

「そこにあなたの努力を感じ、沢山のことを乗り越えてきたことを感じたと。」

「今ならわかりますね。休職することになったからと言って、

それがあなたがベストを尽くさなかった意味にはならないと。」

 

あなたは大きく涙を流しながら頷いた。

 

僕たちは、自分と一緒にいる時間が必要だ。

 

大切なテーマに取り組むその前に、

ただ自分に寄り添ってあげる時間も必要なのだ。

野川  仁
・元引きこもりの心理カウンセラー
・JCA カウンセリング・傾聴スクール 講師 
・(一社)日本心理カウンセリング協会 代表理事
現在は、都内のクリニックでカウンセリングも行っている。

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